9thコンサート演奏曲紹介⑦「内なる遠さ」より『合掌ーさる』

(前回記事はこちら)

「内なる遠さ」の楽曲紹介、3曲目は・・・


『合掌ーさる』

------------------------------

逃げまどい 逃げ遅れ

逃げ場をなくした子連れのさるは

銃口に向かって 手を合わせ

必死に手をすり合わせ

泣きながら拝むとか

見逃してくれ と拝む様

そっくり人間のものだとか

さすが さるうちの名人も

この時だけは引き金を引けず

はよ逃げろと眼を閉じて

思わず泣いてしまうとか

里もいやだが

もう山もいやだ

さるうちは因果な仕事だ と

語ってくれた老人の名は忘れたが

その合掌ばかりは

今も鮮やかに思い出す 

------------------------------

ここまでご紹介した2曲から一転して、非常に具体的で衝撃的な情景を描いています。猿を捕獲する"さるうち"の前に追い詰められ、銃口に向かって必死に手を合わせ、拝み懇願する子連れの猿の姿です。その姿は「そっくり人間のものだとか」と表現され、極限状態での命乞いが、動物と人間の区別を超えた普遍的な悲劇として描かれています。そして、それを見たさるうちの名人さえもが銃を引けず、思わず泣いてしまうという描写は、『因果』や『慈悲』といった、生命の倫理に関わる深い問いかけを聴く者に突きつけます。

楽曲も前2曲から大きく変わり、絶望的な状況下での祈りを、重厚かつ劇的に表現しています。ロ短調(b-moll)の深い響きはそのままに、感情の起伏が激しくなり、追い詰められた猿の悲痛な叫びが、合唱の緊張感あふれるハーモニーで表現されます。ピアノは、緊迫したリズムを刻み、情景の切迫感を高めます。最後の「その合掌ばかりは 今も鮮やかに思い出す」という言葉が歌われる部分では、沈黙と静寂の中に消え入るように締め括られ、人間の心に残る強い印象、すなわち生命への畏敬の念を刻み込みます。この心揺さぶられるドラマを、ぜひ会場で体感してみてください。


合唱団ル・グラン9thコンサート チケット購入ページ



0コメント

  • 1000 / 1000