9thコンサート演奏曲紹介⑧「内なる遠さ」より『燃えるものー蜘蛛』
(前回記事はこちら)
「内なる遠さ」の楽曲紹介、4曲目は・・・
『燃えるものー蜘蛛』
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枝と幹の間
そよ風に自分の重さを賢く委ね
おまえが張った蜘蛛の巣に
けさは朝露がまぶしく光る
だがおまえがその糸で求めていたものは
おまえのなかにだけあったまぶしさだ
はき出して はき出して
いのちの限り
おまえはおまえの内部を手繰る
だれが垂らした釣糸か
果てしないこがれのように
たぐってもたぐっても終わらない
こんな不思議な釣糸を
たしかに深くおまえの底へ
ひそかに垂らしたものがいる
ひそかに託したものがいたのだ
しかし今
手繰る糸にたしかな手応えだ
もしかしたら星かもしれぬ
星かもと思えるほどの
遥かなものの手応えだ
その糸の最後の端に
炎のようい燃えるもの
それをおまえは星と呼び
念いつづけて ただ一途にたぐる
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詩は、蜘蛛が自らの体から糸を吐き出す行為を、自分自身の深淵を探る精神的な営みとして描いています。蜘蛛が求めているのは、単なる獲物ではなく、自分の底に託された「果てしないこがれ」の正体です。手繰り寄せても終わらない糸の先に、いつしか蜘蛛は「星」とも思えるほど遥かな、炎のように燃えるものの手応えを感じ取ります。一途に、ひたむきに自らの生命を燃やし、目に見えない理想を追い求める姿は、私たち人間の生き方そのものへの問いかけとなっています。
音楽で印象的なのは、蜘蛛が執拗に糸を繰り出す動きを象徴するような、ピアノによる速く鋭い打鍵です。この一定のリズムが曲全体に心地よい緊張感を与え、聴き手を一気に蜘蛛の集中力の世界へと引き込みます。合唱は緻密に構成された不協和音を奏でながら、獲物を待つ静かな時間と、内面で渦巻く激しい情熱の対比を表現します。
中盤からの「はき出して はき出して」というフレーズでは、言葉の繰り返しとダイナミックなクレッシェンドによって、生命を削りながら理想を追い求める必死さが痛烈に伝わってきます。
終盤の「しかし今」からは、AndanteからAllegroへのテンポ変化によって切迫感を伴いながら、クライマックス:糸の先の「星」に向けて音楽的な広がりを見せ、それまでの孤独な探求が宇宙的なスケールへと昇華されます。
小さな蜘蛛の営みの裏側に隠された、炎のように燃える魂の輝きを鮮烈に浮き彫りにしている1曲。この圧倒的なエネルギーを、お楽しみください!
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