9thコンサート演奏曲紹介②Warum

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演奏曲紹介第2弾!

本日は、ドイツの巨匠ヨハネス・ブラームスの名曲を。


Warum ist das Licht gegeben dem Mühseligen? 

Op.74-1 (J.Brahms)

邦題:なぜ、苦しむ者に光が与えられるのか?


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Warum ist das Licht gegeben dem Mühseligen, und das Leben den Betrübten? Die des Todes warten und kommt nicht, und grüben ihn wohl aus dem Verborgenen; die sich fast freuen und sind fröhlich, wenn sie das Grab finden. Und dem Manne, des Weg verborgen ist, und Gott verhänget ihm.

Warum ist das Licht gegeben dem Mühseligen, und das Leben den Betrübten?

Siehe, wir preisen selig, die erduldet haben. Die Geduld Hiobs habt ihr gehöret, und das Ende des Herrn habt ihr gesehen; denn der Herr ist barmherzig und ein Erbarmer.

Mit Fried und Freud ich fahr dahin, in Gottes Willen, getrost und stille. Wie mir verheissen hat der Herr, der Tod ist mir ein Schlaf worden.


なぜ、苦しむ者に光が与えられ、 心の痛む者に命が与えられたのか? 彼らは死を待ち望むが来ず、隠された場所から死を掘り出そうとし、 墓を見つけたときに、ほとんど喜び楽しむのに。 そして、その道が隠された人に、神はそれを覆い隠されるのに。

なぜ、苦しむ者に光が与えられ、心の痛む者に命が与えられたのか?

見よ、私たちは耐え忍んだ人々を幸いだと褒めたたえる。 あなたがたはヨブの忍耐を聞き、主の結末を見た。 なぜなら、主は慈悲深く、憐れみ深い方だからだ。

私は安らぎと喜びをもって旅立つ、神の御心のままに、慰められ、静かに。 主が私に約束してくださったように、死は私にとって眠りとなったのだ。

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この曲が書かれたのは1877年頃。ブラームスは当時40代半ばで、すでにヨーロッパ中でその名を知られる大作曲家でした。彼は、ベートーヴェンの後継者と言われるほどのロマン派の頂点にいましたが、バッハをはじめとする古い時代の音楽(特に「対位法」)を猛烈に研究し、自分の音楽に取り入れていました。

このモテットは、彼がどれだけ真剣に音楽と向き合っていたかを示す証拠のような作品です。彼は、単なるメロディの美しさだけでなく、複雑な声部の絡み合いで深い感情を表現しようとしました。


テキストは、旧約聖書の「ヨブ記」をメインに、他の聖句が組み合わされています。


この曲の構造は、バッハのモテットを思わせる4つの部分に分かれています。この流れが、聴く私たちを「絶望」から「救い」へと導く壮大なドラマになっています。

第1部では、曲が始まるとすぐに「Warum?(なぜだ?)」という激しい問いかけが、ニ短調(d-moll)の重々しい響きで鳴り響きます。全パートが同じリズムで叫ぶ「ホモフォニー」の手法も用いて、神への強烈な不満や怒りが表現されます。

第2部は、一転して非常に複雑なカノン(追いかけっこ)形式で書かれています。6つの声部が、まるで苦悩から抜け出せない迷路のように絡み合います。この厳格な「対位法」は、感情を抑え込み、内省的に苦しみを考えるヨブの姿を映し出しているようです。

そして、第3部で曲調が変わり、「主は慈悲深い」という言葉が現れます。ここでは声部が二つに分かれる「二重合唱」の形となり、荘厳で光に満ちた和声(ハーモニー)が響きます。これは、苦難を耐え忍んだ末に、神の恵みを受け入れる信仰の光を感じる瞬間です。

クライマックスは、第4部のコラール(賛美歌)です。ここでは調性が明るいニ長調(D -dur)に変わり、「死は私にとって眠りとなった」という希望の言葉が歌われます。長調の和音で歌われる賛美歌は、まるで雲間から差し込む光のように優しく、苦しみの果てに得られた安息と平安を聴く人に届けます。


無伴奏でありながら、世界中のどのオーケストラ曲にも負けない、深い感情とドラマが詰まった名曲です。ぜひ、ブラームスの魂の問いかけを、私たちの生演奏で感じに来てください!

9thコンサート会場でお会いできるのを楽しみにしています!また、こんな素晴らしい曲を私たちと一緒に歌いたいという方は、ぜひ練習見学にも来てみてくださいね!

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