9thコンサート演奏曲紹介①Trauergesang
本日から、9thコンサートでの演奏曲を少しずつご紹介!
第1回目は…こちら!!
Trauergesang Op.116(F. Mendelssohn)
邦題:哀悼の歌
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Sahst du ihn hernieder schweben in der Morgenröthe Lichtgewand?
Palmen strahlten in des Engels Hand;
sein Berühren trennt des Geistes Leben von der Erdenhülle schwerem Band.
Wem, o Engel, rufet dein Erscheinen?
Sag, wem gilt dein Flug so ernst und hehr?
Was erblick' ich! Aller Augen weinen, ach, ihr Liebling ist nicht mehr!
Lächelnd schlief er ein, des Himmels Frieden strahlt vom vielgeliebten Angesicht,
und die Mien', in der sein Geist hienieden sich verklärt, verließ ihn sterbend nicht.
あなたは彼が夜明けの光の衣をまとい、舞い降りてくるのを見たか? 天使の手の中で椰子の木が輝き、 彼の一触れが、魂の命を、 重い地上の肉体の束縛から引き離す。
おお、天使よ、あなたの御姿は誰を呼ぶのか? 教えてください、あなたのその厳かで崇高な飛翔は誰のためなのか? 何が見えるだろう!皆の目が涙している、 ああ、彼らの最愛の人は、もういない!
彼は微笑みながら眠りについた、天の平安がこの愛された顔から輝き出ている、 そして、地上で彼の魂が澄み切っていたその表情は、 死を迎えるときも、彼から離れることはなかった。
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Trauergesang(哀悼の歌)は、作曲者フェリックス・メンデルスゾーンが晩年に書いた作品です。
この曲が作曲された1845年、メンデルスゾーンはプロイセン王国の首都ベルリンにいました。彼をベルリンに招聘(しょうへい)したのは、当時の国王フリードリヒ・ヴィルヘルム4世です。 芸術を深く愛したロマンティストな国王は、メンデルスゾーンの才能を高く評価し、彼をプロイセン王立芸術アカデミーの音楽部門の責任者、そして宮廷楽長として迎え入れました。
国王の「お気に入り」として、メンデルスゾーンは宮廷の音楽を一手に任されます。しかし、このベルリン時代は彼にとって、輝かしい名誉と同時に、宮廷内の複雑な人間関係や保守的な雰囲気との戦いでもあり、多くの心労を伴うものでした。
「Trauergesang」が持つ、どこか重く、内省的な響きは、こうしたベルリン時代の彼の心境を映しているかのようです。
そして、この時期のメンデルスゾーンの宮廷での役割を象徴する出来事がありました。 国王フリードリヒ・ヴィルヘルム4世の叔父にあたる、アウグスト王子(アウグスト・フォン・プロイセン)の死です。
1843年にアウグスト王子が亡くなった際、メンデルスゾーンは国王の命を受け、その追悼行事の音楽を取り仕切ることになります。彼は自作ではなく、ヘンデルのオラトリオ「サムソン」を追悼コンサートとして指揮しました。
王室の重要な一員を失った悲しみと、それを公の儀式として荘厳に演出しなければならないという重責。メンデルスゾーンは、作曲家としてだけでなく、宮廷音楽家として「死」と「追悼」というテーマに直面していたのです。
さて、話を戻しましょう。 この曲が作曲されたのは1845年。アウグスト王子の死から2年後です。
そのため、この曲がアウグスト王子の葬儀のために「直接」書かれたわけではありません。別の貴族の葬儀のために書かれたという説もあります。
しかし、無関係とは到底思えません。 国王フリードリヒ・ヴィルヘルム4世の庇護のもと、アウグスト王子の死のような王室の厳粛な儀式を経験したベルリン時代だったからこそ、これほどまでに深く、敬虔(けいけん)な「哀悼の歌」が生まれたのではないでしょうか。
そこには、特定の個人の死を超えた、普遍的な悲しみと、それを受け入れる静かな強さが込められています。メンデルスゾーンがベルリンで感じた重圧と、芸術家としての誠実さが結晶したような作品です。
曲は基本的にホモフォニー(複数の声部が同じリズムで進行する様式)で進行します。言葉一つひとつを明確に、そして和声の響きを大切に届ける書法です。
ト短調から始まりト長調へ展開していく和声進行や、pp(ピアニッシモ)からf(フォルテ)まで使われた強弱変化など、表現の幅が非常に広いのも特徴です。この表現のコントラストによって、深い哀悼の意が表現されていると言って良いでしょう。
また、旋律と歌詞の語感が非常にマッチしており、自然に喋るように流れていくメロディになっています。
メンデルスゾーンの重厚な響きに乗せて、荘厳な祈りの音楽をお届けします。
是非、会場でご堪能いただければ幸いです🎵
合唱団ル・グラン9thコンサートへ、ぜひ足をお運びください!
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